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配偶者短期居住権とは?配偶者居住権との違いや期間を解説

  • 文責:所長 弁護士 岡田大
  • 最終更新日:2025年1月10日

「配偶者短期居住権」や「配偶者居住権」は、長寿社会や相続争いの防止といったニーズに対応するために、2020年4月施行の民法改正で設定された権利です。

この記事では、「配偶者短期居住権」に焦点を当てて、配偶者短期居住権とはどんな権利か、配偶者居住権との違いは何か等についてわかりやすく解説します。

1 配偶者短期居住権とは?

配偶者短期居住権とは、夫や妻が亡くなった時に、その配偶者が長年住み慣れた自宅に、一定期間無条件かつ無償で住み続けることができる権利です。

この権利は相続開始時に自動的に発生しますので、遺言や遺産分割協議によって権利を設定する必要はありません(よって、遺産分割協議書の文例などもありません)。

配偶者短期居住権の成立要件は次のとおりです。
  • • 被相続人の戸籍上の配偶者であること(事実婚や内縁の配偶者は含みません)
  • • 被相続人の所有していた建物に、相続開始時に無償で居住していたこと

2 配偶者短期居住権と配偶者居住権との比較

配偶者短期居住権に似た権利に「配偶者居住権」があります。

次に、配偶者居住権との違いについて見ていきます。

⑴ 発生の条件

配偶者短期居住権は、「配偶者短期居住権の成立要件」を満たしていれば、相続開始時に自動的に生じます。

一方で、配偶者居住権は自動的に生じるものではなく、遺産分割協議、遺言、死因贈与契約などによってこの権利が与えられなければなりません。

⑵ 期間制限

配偶者短期居住権には、例えば、「相続開始から6ヶ月を経過する日まで」といった、存続期間の制限があります。

一方、配偶者居住権は、遺産分割協議や遺言等で存続期間を設定されることもありますが、設定されなければ、配偶者が生きている間存続します。

⑶ 対象の部分(居住部分・建物全体)

配偶者短期居住権は、居住部分だけが対象となります。

一方、配偶者居住権は、居住部分だけでなく、店舗なども含めて建物全体が対象になります。

そのため、配偶者居住権では、店舗などから得た収入も配偶者のものとなります。

⑷ 登記の可否

配偶者居住権は登記ができますが、配偶者短期居住権は登記できません。

そのため、配偶者短期居住権は、たとえば居住建物所有者から譲渡を受けた第三者に対抗することができず、配偶者は、第三者から立ち退きを求められたら、従わなければなりません。

もっとも、この場合、居住建物所有者は、配偶者の建物短期居住権の行使を妨げてはいけない(民法第1037条第2項)のに、建物の譲渡によって妨げていることになりますので、居住建物所有者は配偶者に対して債務不履行責任(賃料相当額)を負うことになります。

⑸ 相続税の課税

配偶者短期居住権の価額はゼロですので、相続税は課税させません。

一方、配偶者居住権には価値があり、相続税の課税対象になります。

しかし、配偶者が死亡した時点で配偶者居住権は消滅し、価値がゼロになるので、配偶者の二次相続時は相続税の対象にはなりません。

3 配偶者短期居住権の注意点

配偶者短期居住権を使う場合の注意点・問題点は以下の通りです。

⑴ 配偶者短期居住権には期間の制限がある

先述の通り、配偶者短期居住権には期間の制限があり、配偶者居住権を取得しない限りは、期間の経過によって自宅から出ていかなければなりません。

また、次の条件が満たされると、この権利は終了します。

  • • 配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をする場合は、「遺産分割によりその建物の相続人が決まった日」か「相続開始から6ヶ月を経過する日」のどちらか遅い日が経過した場合(民法第1037条第1項第1号)
  • • それ以外の場合、例えば、遺言で居住建物の相続人が指定されていた場合は、居住建物の相続人が配偶者に対して「配偶者短期居住権の消滅請求」をした日から6か月後が経過した場合(民法第1037条第3項、同条第1項第2号)
  • なお、居住建物の相続者は、いつでも配偶者短期居住権の消滅請求をすることが可能です。

  • 上記以外の場合でも、次の事由が発生した場合は、配偶者短期居住権は消滅します。

  • • 配偶者の死亡
  • • 配偶者居住権の取得
  • • 当該居住建物の全部滅失
  • • 居住建物取得者から配偶者短期居住権者への意思表示による消滅

なお、この「居住建物取得者から配偶者への意思表示による消滅」ができるのは、配偶者が、建物を居住以外の用途に使用した用法遵守義務違反をした場合や、善管注意義務違反をした場合です(民法第1038条第3項)。

この場合は、意思表示が配偶者に到達した時点で、配偶者短期居住権が消滅します。

⑵ 配偶者は居住建物の必要費用を負担

修繕費用などの必要費用は、配偶者短期居住権を取得した配偶者が負担しないといけません。

居住建物の取得者は、配偶者が無償で居住建物を使用することを許容するだけなので、修繕費用などは配偶者が払わないといけないのです。いわば、民法上の使用貸借の関係と似ています。

4 配偶者短期居住権を利用すべきケース

⑴ 配偶者居住権が設定されない

他の相続人や第三者が自宅を取得し、配偶者居住権が設定されないケースでも、一定期間自宅に住み続けることが可能ですので、ある程度時間的余裕をもって、引っ越し先などを探すことができます。

⑵ 家庭裁判所で配偶者居住権を請求する

遺産分割協議などで配偶者居住権を得られない場合は、家庭裁判所に配偶者居住権を請求することができます。

家庭裁判所での調停や審判がでる間、一定期間、自宅に住み続ける事ができます。

どちらにしても、遺された配偶者が「これまで住んでいた自宅以外の場所にすぐに引っ越しできる」のであれば、この権利を使う必要はないかもしれません。

しかし、それ以外の場合は、まずこの権利を使って自宅に住み続け、他所に移るのかどうかも含め、今後の生き方をじっくり考える時間を作るのが得策です。

5 配偶者短期居住権については弁護士にご相談を

今回は、2020年4月施行の民法改正で設定された「配偶者短期居住権」について見てきました。

配偶者短期居住権は、有効期間の制限がありますが、相続開始時に自動的に付与されますので、使い勝手のよい権利です。

仮に、自宅を相続できない場合であっても、一定期間、住み慣れた自宅に居続けられますので、次のステップに向かうための時間的猶予ができます。

一方で、配偶者短期居住権は、一時的に住む権利ですので、自宅にずっと住み続けたい配偶者にとっては、配偶者居住権を得た方が良いのは言うまでもありません。他の相続人との遺産分割協議が重要になります。

このような配偶者居住権や配偶者短期居住権でお困りの方や、将来の相続のための事前準備をお考えの方は、是非一度、弁護士法人心にご相談ください。

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